消費電力削減の技術:メモリー性液晶
(追記 同日13時15分:こまごまと表現をいじったり、文章を付け足したりしました。また、タイトルを「メモリー性液晶」から変更しました)
今日は授業がなくて暇が出来たので、久しぶりに本気(or真面目)な記事。「環境」に関係があるけれど、メインの話題は「技術」に関する学術的なことなので、「学術:技術」のところにカテゴリ分けしておきました。この記事は、シチズン社の『メモリー性液晶』の発表に関する感想をまとめたものです。
というわけで先の発表にあるように、電力無しで表示内容を維持する機能を持った液晶の目処が、いよいよ立ったらしい。しかも時計で有名なシチズン社からの発表だというところが面白いと思った。こういった性能を持った液晶がどうして求められているのかというと、リンク先の説明にもあるとおり、消費電力を押さえるのに非常に効果的だから。今までの液晶では、次の二点で電力が必要だった。
- 表示内容を変えるため
- 表示内容を維持するため
前者に電力が必要なのは理解できると思うけれど、後者に電力が必要というのはいまいち理解しにくいかもしれない。まずはその仕組みに関する一応僕自身の解釈を書いておく。
液晶の仕組みというのは、基本的にはその裏から発せられている発光ダイオードなどの光を通すか遮るかということになっているはずだ。いや、もちろん反射光のみを使うタイプもあると思うがあまり液晶の役割に変わりはない。光を通すか遮るかのオン/オフは、液晶が同一方向に配向するかしないかで制御されているはず。で、液晶が同一方向に配向したままでいるためには、電力が必要なのだったと思う。だから結局のところ、液晶画面で同じ内容を表示させ続けるためには、電力をかけて液晶を一定の方向に向かせ続けなくてはならない。
シチズン社の発表したような「メモリー性液晶」では、2番目に挙げた「表示内容を維持するため」の電力が要らないから、消費電力を抑えることが出来るというわけ。とりわけ同じ内容を表示したままでいるような場面で使われている液晶にこの機能を持ったものを導入すると、消費電力削減の効果が大きい。
文部科学省のナノネット(ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンター)にあったインタビュー記事のキーワード説明のところから、関連する説明を引用しておく。
メモリー液晶デバイス
パソコンやTVに広く使われている液晶ディスプレイは、電源がなければ画像を保持することができません。普通の液晶は、加えられた電界の時間平均に応答するため、画像を表示するためには常に電圧を掛け続けなくてはならないのです。これに対してメモリー液晶は、電界が印加されていなくても、画像を表示できるように、光学的に識別可能な複数の安定状態を持つ特別のものです。
ユビキタス情報時代に応えて、液晶デバイスの消費エネルギーを低減させる技術として期待が高いものの、その実現は容易ではなく、実用的な技術の開発はこれからの課題です。
「ナノネットインタビュー : 微界面による液晶のナノ構造制 ~液晶研究のフロンティア~ - 文部科学省 ナノテクノロジー総合支援プロジェクトセンター」 より
電力無しに表示内容を維持している仕組みについては、この引用本文では「光学的に識別可能な複数の安定状態を持つ特別のもの」
であればいいと書いてある。シチズン社は、これを次のように解決したようだ。
本製品では、従来の液晶で使用されているポリイミド配向膜の代わりに、素材として無機配向膜を採用、配向膜と液晶分子との極角度を20度近くに設定することにより、液晶ディスプレイにおける十分なメモリー性の確保に成功しました。
と自信満々に引用したわりには、この言っている内容はあまりよく理解できないんですが。とりあえず面白いと思ったのは、無機材料の膜が効果を上げたというところ。ただ、どんな代物なのかあまり想像できない。
まぁこの液晶の進歩を大雑把な例えで説明すると、「オンにするためにずっと抑えていなきゃいけなかったスイッチが、オンでもオフでもカチッと止まってくれるから押さえ続けなくても大丈夫になりましたよ。これで労力が減りますね」というようなことだ。これだけ聞くとものすごく単純な話に聞こえるかもしれないけれど、技術的には色々面倒だったというわけ。
で、今回のような機能を持った液晶は、テレビやパソコンなどのディスプレイのように時々刻々と表示内容が変わる液晶製品に適用しても、あまり大きな消費電力減は見込めない。むしろある程度の長さで同じ内容を表示し続けるような、電子書籍を読むための機器や電子ペーパーなどで需要が出ているはずだ。このことはしっかりと先のシチズン社の発表記事の最後で触れられていた。
なお今後は、電子棚札や各種メータなどの液晶表示部、携帯電話のサブ液晶ディスプレイ、電子ブックや電子ペーパーなどの幅広い分野で営業活動を行っていきます。
前述の場面以外にも、棚札や携帯電話のサブディスプレイというのが例示されている。これらも確かに効果がありそう。棚札なんて数日に一度更新するくらいのものだからほとんど更新されないし、携帯電話のサブディスプレイは時計の表示が切り替わる時とメールが届いた時くらいだから、おおよそ1分に一瞬しか動作の必要がない。
資源の有効利用のために掲げられた「3R」(Reduce: 削減、Reuse: 再使用、Recycle: 再資源化)という概念をご存知だろうか? 4Rとして「Refuse(拒否)」を導入する意見もあるがここではあまり重要でないのでそこにはつっこまない。というか僕は「それってつまりReduceじゃん」とか思うのだけれど、これを言い始めると脱線してしまうのでこの件については別の機会で。
で、資源の有限性が注目されてから、まず初めに取り組まれたのは技術的に取り組みやすい「Recycle(再資源化)」だったのだけれど、最近はだんだんそれで改善できる範囲も限界が見えてきたと思う。それで、今回のメモリー性液晶のような「Reduce(削減)」を考える段階に入ってきたのかなーというのが印象深い。
ところで、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の技術データシートというところのページで、「電源を切っても表示画像が消えないメモリー性液晶表示素子」という、似たような技術の情報が掲載されていた。研究段階で2002年2月の登録で、登録元はミノルタか。シチズンに先を越されちゃったわけね…。この辺の競争もまた結構激しそうだなぁ。
(当ブログ "academic :: technology" カテゴリ 内の記事です)
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